


セイヤは、急性脳症の後遺症により思うように言葉を発せない。だけど、おしゃべりをすることが大好きだ。人とのコミュニケーションは、相手がセイヤの言葉から想像を膨らませて会話が成立する。
そんなセイヤは、兄の紘雅(こーちゃん)のことが世界で一番大好き。いつも一緒にいるこーちゃんは、気になって仕方がない存在。脳内90%は「こーちゃん」が支配しているのではと感じるほど、誰と話しても、会話の返事のほとんどが「こーちゃん!」になる。
「かーちゃん」「あーちゃん」など、他の言葉が飛び出すことはまれである。ちなみにかーちゃんは母。あーちゃんは父のこと。家ではあまりにも「こーちゃん」ばかりでうるさい時は「ほかの言葉で返事をしなさい」と不条理に怒られる原因にもなる。
おしゃべりをすることで人との関わりを楽しんでいるセイヤだが、話す相手にとってはどう話しかけてよいものかと戸惑うのではないだろうか。そこで生まれたのが、「こーちゃんゲームマスター」だ。
ゲームマスターのセイヤから、5分間の中で、いかに多くの「こーちゃん」という言葉を引き出せるかというゲーム。一回の「こーちゃん」につき1点。「かーちゃん」は2点。滅多に言わない「おーちゃん」は高得点の5点。「こここここーちゃん」などは、「こ」の数だけ得点になる。
言葉を引き出すために、お客さんはどんどんマスターに話しかける。返事をするセイヤの言葉に聞き耳をたててくれることは、それだけでセイヤにとっては嬉しいことであり、「こーちゃん」を連呼しても怒られるどころか、喜んでもらえる。なんて楽しい会話であり、ゲームの時間だろう。


















